RFP(提案依頼書)の書き方とサンプル例!作成時のポイントも紹介
2023.07.19(水)
- Webシステム

システム開発やアプリケーション開発、Web制作などを開発会社に依頼する際に用意しておきたいのがRFP(提案依頼書)です。
RFPには開発・制作における目的や要件など、業務の依頼に必要な情報を記載します。
システム開発やWeb制作の発注に、RFPの作成は必須ではありませんが、作っておくと自社の要件をスムーズに伝えることができます。
ただ、RFPを作成した経験がないと何を書いたらいいか分からないことでしょう。
そこで本記事では、RFPの基礎知識や書き方、サンプル例などを解説します。
RFP(提案依頼書)とは?
まずRFPの書き方を理解する前に、RFPの基本的な知識や必要性を押さえておきましょう。
RFPについて
RFPとはRequest for Proposalの略称で、日本語で「提案依頼書」の意味があります。
システム開発やWeb制作などを発注する企業が作成し、提案の依頼先となる開発会社に提示する文章です。
RFPを提示された開発会社は、その内容に基づいて見積もりや提案書の作成を行います。
発注者側が内容に合意すれば、契約締結となりプロジェクトが進行します。
RFPを作成する目的
RFPを作成する目的は、発注者側と開発会社の間で認識のズレを防ぐことです。
システム開発・Web制作をするには、目的や要件などさまざまな情報を共有しておく必要があります。
すべての情報を口頭で説明していると、説明者によって内容の解釈が異なったり、伝達漏れが発生したりします。
提案依頼先(発注先候補)に正確な情報を伝えられないと、自社の要件を満たさない提案を受けることになる場合があります。
RFPに必要な情報をまとめておくと、すべての提案依頼先の企業に対して、必要な情報を正確に伝達できます。
RFPに明記しておくことで、前提条件や認識のズレを防げるため、自社の要件に合う提案を受けられるようになります。
RFP(提案依頼書)の書き方と必要項目

続いて、RFPの書き方と必要項目を紹介します。サンプル文章も紹介しているので、RFPを作成する際に活用してみましょう。
概要・発注者の基本情報
RFPの概要・基本情報には、どのような内容が記載されているのかを簡潔に記載します。文章を読むだけで、書類の位置付けや全体感をつかめるようにしましょう。
また、概要・基本情報は冒頭に記載するため、自社の会社名や拠点の所在地などの情報も必要です。
【サンプル文章】
- 〇〇開発(制作)プロジェクトの提案依頼書
- 〇〇株式会社 担当者〇〇
現状の課題
プロジェクトを進めるにあたって、自社が解決したい課題や背景などを記載します。プロジェクトを実施する理由となる項目のため、正確に相手に伝わるようにするのが重要です。課題を明確にしておくことで、解決するために最適な提案を受けられます。
課題は一つでなくてもよく、複数ある場合はすべて記載しましょう。
箇条書きや表などを使用して見やすくまとめると、提案依頼先(発注先候補)に情報が伝わりやすくなります。
【サンプル文章】
- 2015年に導入したITインフラの保守が2023年で終了するため、リプレイスを検討している。
- 〇〇システムが老朽化しており、事務作業に◯時間かかっている
- 2010年に制作したホームページの情報が古くなっているため、リニューアルしたい。
プロジェクトの目的
課題を踏まえて「何を実現したいのか」というプロジェクトの目的を記載する項目です。
RFPで目的が明確になっていると、目指すべき姿からのズレを防止できます。
【サンプル文章】
- 〇〇業務を効率化させるため、〇〇システムを導入する。
- ホームページの情報を最新の状態にするため、リニューアルする。
ゴール・目標
プロジェクトで目指すゴール・目標を記載する項目です。ゴール・目標には、目的を達成するための具体的な目標を記載しましょう。
定量的に目標を記載しておくと、提案する側も目標達成するための提案・施策をよりイメージしやすくなります。
【サンプル文章】
- 〇〇システムを導入して、事務作業にかかる時間を30%短縮する。
- ホームページをリニューアルして、アクセス数を30%向上させる。
予算
プロジェクトの予算を記載する項目です。提案依頼先は予算に合わせて、体制や工数などを想定して提案内容を作成します。RFPで予算感が分かるようになっていると、予算感に沿った無理のない提案を受けられます。
予算を決める際は、100〜1,000万円のように予算の幅が広いと、できることの幅も広がってしまい提案の精度が下がってしまいます。
下記のサンプル文章のように、各項目に必要となる予算の上限をできるだけ具体的に記載しましょう。
【サンプル文章】
- システム開発費用:300万円
- 運用・保守費用:月額50万円
- ITインフラ費用:100万円
スケジュール
システム稼働やWebサイト公開などに向けた全体スケジュールを記載する項目です。いつまでに何をやるべきなのか明確にしましょう。
システム開発やWeb制作では、スケジュールどおりに進まないケースがあります。あらかじめ余裕を持ったスケジュールを設定するのがポイントです。
【サンプル文章】
- RFP公開日:2023年5月1日
- 提案・見積もり提出:2023年6月1日
- 提案プレゼン:2023年6月15日
- 契約:2023年7月
- プロジェクト開始:2023年8月
- システムの稼働(ホームページ公開):2024年1月
対象範囲
発注者側と受注者側の双方の対象範囲を記載する項目です。
対象範囲が明確になっていると、提案依頼先も自分たちの業務内容が明確になり工数の算出がしやすいので、精度の高い提案を受けられます。
対象範囲が不明確だと、あとから追加発注する作業が出る可能性があり、提案時よりも費用が高騰する場合があることに注意しましょう。
【サンプル文章(発注者側/受注者側が対応する範囲)】
- プロジェクト管理
- 要件定義
- システム設計
- システム開発
- テスト・リリース
- セキュリティ対策
- 操作手順書の作成
- 教育
オプション提案
プロジェクトに必須ではありませんが、任意で提案してもらいたい内容があれば、オプション提案に記載します。
【サンプル文章】
- システムリリース後の運用・保守体制
- ホームページリニューアル後の集客施策
成果物
成果物は最終的な納品物のことです。RFPの内容に納品してもらいたい成果物を明記しましょう。
【サンブル文章】
- 要件定義書
- システム設計書
- テスト報告書
- 操作マニュアル
- ソースコード一式
機能要件
機能要件は、システム開発やWeb制作などに必要な機能を記載する項目です。
例えば、Webサイトの制作を依頼するなら、会員登録・管理機能、FAQ検索機能、基幹システム連携、データベース連携などが挙げられます。
システムやWebサイトに搭載する機能によって提案内容が異なってくるため、あらかじめ明確にしておきましょう。
【サンプル文章】
- 商品の販売履歴を画面に表示したい
- 納品者を自動で作成する機能がほしい
- ホームページを自分たちで更新できる仕組み(CMS)を入れたい
非機能要件
非機能要件は、搭載する機能以外の要件を記載する項目です。
- 可用性
- 性能・拡張性
- 運用・保守性
- 移行性
- セキュリティ
- システム環境・エコロジー
非機能要件は機能要件と同様に重要な項目です。ユーザーからの意見をもとに要件を決めると、納得のいくシステム開発・Web制作を実現できます。
【サンプル文章】
- システムへの不正アクセス防止をしたい
- システムリリース後、問題発生時の体制を整えたい
- 移行スケジュール立案、リハーサルを実施したい
設計・開発・テスト要件
プロジェクト内の設計・開発・テスト工程で、必要な要件を記載する項目です。要望がある際は、RFPに記載しておきましょう。
【サンプル文章】
- JavaまたはC#のプログラミング言語を使用してほしい
- 〇〇テストを実施して結果を提出してほしい
教育・研修
自社のメンバーに対して、システム・ホームページに関する教育や研修の要望があるなら記載しましょう。
教育や研修を実施すると、初めて利用するシステムでも操作方法を覚えやすくなり、その後の運用もスムーズになります。
【サンプル文章】
- 〇〇システムの操作方法のマニュアルを用意してほしい
- 実際の画面を見ながら操作方法を解説してほしい
提案情報
提案情報は、RFP公開後の提案に関する情報を記載する項目です。主に提案の提出日や提出先などの情報を記載します。
【サンプル文章】
- 提出期日:◯月◯日正午まで
- 提出フォーマット:PDF形式
- 提出先:〇〇部〇〇課 担当〇〇のメールアドレスまで
- 提出物:提案書、見積書、サンプル成果物
契約事項
契約事項は、支払い条件や保証年数、著作権、秘密保持契約などの契約に関する情報を記載する項目です。
あらかじめ契約事項を決めておかないと、トラブルに発展する可能性があります。
【サンプル文章】
- 支払い条件を明示してください。
- 納品対象となるシステムのプログラムソースや画像、写真などの所有権、利⽤権、⼆次的著作物の利⽤権などの権利は、対価の支払い時点で弊社に帰属されるものとする。
RFPのサンプル例を無料でダウンロード!
ここまで紹介してきたRFPに必要な項目とサンプル文章を、1シートにまとめたPDFを下記より無料でダウンロードできます。
システム開発やWebサイトリニューアルなどを依頼する際に検討すべき内容がまとまっていますので、活用してみてください。
また、参考に、本サイトで紹介した以外でRFPのサンプルをチェックできるサイトも記載します。
- タクト情報システムズ株式会社「RFP(提案依頼書)の書き方」
- ITコーディネータ協会「RFP/SLA見本」
- おしえてレディくる「Webサイト制作向けのRFP(提案依頼書)のWordサンプルを無償公開」
RFP(提案依頼書)を作成する際の7つのポイント

前項ではRFPの書き方やサンプルを紹介しました。加えて、RFP作成時に気をつけたいポイントを7つ紹介します。
作成のポイントを押さえて、効果の高いRFPを作りましょう。
- 社内の関係部門に共有する
- 選定基準を明確にする
- RFPの質に応じて提案の質が変わる
- 事前に運用面を明確にする
- 型を意識しすぎない
- 時間をかけすぎない
- 追加要求を避ける
それぞれ参考にして、活用してみてください。
社内の関係部門に共有する
システム開発やアプリケーション開発は、特定の部署だけでなく、システム部門・マネジメント層・マーケティング部門などのさまざまな部署が関わります。
関係部署と連携しながらRFPを作成すると社内の認識の齟齬・記載漏れを防止できます。
自社の要件をすべて記載したRFPを作成できれば、期待どおりのシステムやアプリケーション、Webサイトなどを生み出すことができるでしょう。
選定基準を明確にする
RFPを作成したら、提案依頼先に共有します。提案を依頼したい企業が決まっている場合は、RFPを元に話し合いましょう。
複数の業者に提案を依頼する場合はコンペを開催して発注先を選定します。コンペを行う場合はあらかじめ選定基準を明確にしておくと、スムーズに発注先を選定できます。
- 費用
- 担当者とのコミュニケーション
- 強みのある分野
- サポート体制
発注先の選定に時間がかかると、プロジェクト全体のスケジュールに影響が出てしまうため、注意しましょう。
RFPの質に応じて提案の質が変わる
理想のシステム開発やWeb制作を実現するなら、RFPの質を意識しましょう。
RFPはシステムやWebサイトに求める自社の要件を提案依頼先に伝える役割があるため、必要な情報が相手に正確に伝われば、最適な提案を受けられます。
提案を受けるまでの時間の短縮につながるほか、RFPの情報が提案依頼先との深いコミュニケーションにつながり、提案の質や精度を上げることにもなります。
RFPを作成する際は質を高めるため、記載漏れをなくしたり、誰が読んでも理解できる文章にしたりして、分かりやすさを重視しましょう。
事前に運用面を明確にする
システム開発やWeb制作などは、リリースして終了ではありません。リリース後は、安定稼働させるために運用・保守をする必要があります。
リリース後スムーズに運用を開始できるように、RFPを作成する段階で運用面についても明確にしておきましょう。
自社で運用・保守をするのが不安なら、発注先の企業に任せるのも一つの方法です。発注先に任せるなら、RFPの内容に運用・保守の項目を含めて記載しましょう。
型を意識しすぎない
RFPの書き方はルールが定められていません。自社の要件が正確に伝わるなら、どのような内容を記載しても問題ありません。
そのため、型を意識しすぎず、伝えるべき内容が伝わるような内容で書きましょう。
時間をかけすぎない
RFPに時間をかけすぎると、後続のスケジュールに影響し、希望の時期に成果物が納品できなくなってしまうことも考えられます。
自社の希望・納期・予算など、提案を依頼する際に必須の項目に絞って検討することで、RFPの制作をスムーズに進めましょう。
なお、RFPの段階ですべての要件を固める必要はありません。発注先が決まって、開発・制作を進めていく中で調整できることもあります。
調整が可能な範囲は、提案依頼先とも相談しながら進めていくと安心です。
追加要求を避ける
契約してからRFPに記載がない追加要求が発生すると、プロジェクトの見直しが必要になります。
スケジュールの遅延や追加費用が発生する原因となるため、できる限り避けましょう。
RFPに記載する提案時に必要な項目に漏れが出ないよう、また、要件に社内での認識違いが出ないよう、関係者で話し合ってRFPをまとめましょう。
また、RFPに記載がなくとも対応・調整が可能な範囲は企業によって異なることもあるので、提案を受ける中で確認することも重要です。
まとめ~RFP(提案依頼書)を上手に使って、満足度の高い成果物を~
RFPとは提案依頼書のことで、システム開発やWeb制作などの提案を依頼する際にとても役立つ文書です。
RFPに要件をまとめておくと、提案依頼先(発注先候補)に対してプロジェクトに必要な情報を正確に伝えられるので、提案を受けるまでの時間の短縮になるほか、提案の質や精度も上がるので、結果、成果物の満足度も高くなると言えます。
RFPの書き方にはルールが定められていませんが、サンプルとなる例があるとスムーズに作成を進められます。
システム開発やWeb制作などを検討し始めたら、本記事を参考にRFPの作成を進めてみてください。
<業務のシステム化・Webサイト制作を検討中の企業のみなさまへ>
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今回紹介した「提案依頼書」があると助かりますが、もし用意できなくても大丈夫です。
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