無線アクセスポイントとは?オフィスや工場に最適な場所の選び方と導入メリットを解説
2024.11.14(木)
- ITインフラ

企業における無線アクセスポイントの導入は、ネットワーク環境を改善し、業務の効率化や生産性向上を実現するために効果的です。本記事では、無線アクセスポイントの基本的な役割から導入メリット、具体的な導入事例まで解説します。企業が導入を検討する際に重要なポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
無線アクセスポイントとは?
無線アクセスポイント(AP)とは、PCやスマートフォンなどのデバイスが無線ネットワークに接続するための中継器として機能する機器です。有線ネットワークと無線デバイスを接続し、無線ネットワークの信号を提供することで、デバイスがインターネットにアクセスできる環境を構築します。
企業において無線アクセスポイントを適切に配置すれば、ネットワークのカバー範囲を拡大し、効率的な通信が可能となります。業務の生産性向上や、柔軟な作業環境を実現するために効果的です。
無線アクセスポイントの主な機能
無線アクセスポイントが持つ基本的な機能について解説します。
ワイヤレスネットワーク機能
無線アクセスポイントは、Wi-Fiを通じてデバイスとネットワークの橋渡しを行います。物理的なケーブル接続が不要となり、オフィスのさまざまな場所で自由に移動しながらネットワークにアクセスできる環境が整います。
ローミング機能
ユーザーがWi-Fiネットワーク内を移動しても、自動で近くの無線アクセスポイントに接続が切り替わり、途切れることなく接続を維持できる機能です。
大規模なオフィスや工場などの広いエリアでは、複数の無線アクセスポイントを設置することが一般的です。ローミング機能により、従業員がエリア内を移動しても途切れることなくネットワークに接続できます。
ゲストネットワーク機能
訪問者や外部業者など、一時的にネットワークを利用するゲスト向けに安全な接続環境を提供する機能です。ゲストネットワークはインターネット接続ができるものの、社内ネットワークと隔離された別のネットワークであるため、社内のデータやリソースにはアクセスできません。社内情報のセキュリティを保護しながら、ゲストの利便性を確保します。
セキュリティ機能
無線アクセスポイントは、WPA2やWPA3などの最新の暗号化技術を使用して、データ通信の安全性を確保します。無線ネットワーク上でのデータを暗号化し、盗聴や不正アクセスから保護することが可能です。
さらに、多くの無線アクセスポイントには、MACアドレスフィルタリング機能やアクセス制御機能も搭載されています。許可されたデバイスやユーザーのみが接続できるように制御することで、ネットワークの安全性を高めます。
無線アクセスポイントと無線ルーターの違い
無線アクセスポイントと混同されやすいのが無線ルーターです。どちらもWi-Fiネットワークを提供するための機器ですが、役割が異なります。
無線アクセスポイントは、既存の有線ネットワークを無線化してデバイスがインターネットや社内ネットワークに接続できるようにする機器です。単体ではインターネット接続ができず、ルーターに接続することで機能します。
一方で無線ルーターは、ルーターと無線アクセスポイントが一体化した機器で、無線ルーター単体でWi-Fiネットワークの提供とインターネットの接続を実現することができます。また、ルーター機能を無効化し、無線アクセスポイントとして利用することも可能です。
それぞれの特徴をまとめると次のとおりです。
無線アクセスポイント |
無線ルーター |
|
役割 |
既存の有線ネットワークに無線接続機能を追加・拡張する |
Wi-Fiネットワークとインターネット接続を提供する |
接続タイプ |
既存の有線ネットワークに接続して無線通信を提供 |
Wi-Fiを介した無線接続とLANケーブルによる有線接続の両方をサポート |
セキュリティ機能 |
WPA2、WPA3、アクセス制御、MACアドレスフィルタリングなど |
WPA2、WPA3、ファイアウォール機能など |
ネットワークの拡張性 |
複数の無線アクセスポイントを設置することで、柔軟にネットワークを拡張可能 |
基本的に無線ルーター1台で動作し、拡張性は限定的 |
利用シーン |
大規模なオフィスや施設での無線ネットワークの拡張 |
小規模なオフィスや家庭のネットワーク環境 |
小規模なオフィスや家庭など、インターネットに接続するデバイス数が少ない場合は無線ルーターのみで十分に対応可能です。
一方、大規模なオフィスなどでデバイス数が多い場合や、広い範囲でネットワーク接続が必要な場合は、ルーターに加えて無線アクセスポイントが必要となります。ネットワークのカバー範囲を拡大するため、1台のルーターに対して複数の無線アクセスポイントを設置する構成が一般的です。
無線アクセスポイントのトレンド
無線LAN技術は急速に進化しており、無線アクセスポイントも最新のWi-Fi規格やクラウドベースのソリューションがトレンドとして注目されています。これらの技術は、運用を効率化したり、企業の競争力を高めたりするために重要な要素です。
Wi-Fi 6EやWi-Fi 7
次世代の無線LAN技術であるWi-Fi 6EやWi-Fi 7を採用した無線アクセスポイントは、従来よりも高速かつ安定した通信を提供し、大量のデバイスが接続される環境でも性能を発揮します。
Wi-Fi 6Eは、従来の2.4GHzと5GHz帯域に加えて6GHzの帯域を利用できるため、ほかのデバイスとの干渉が減少し、高速通信が可能です。オフィス内で多数のデバイスが同時に接続しても通信速度が低下しにくく、特に大規模なネットワークでのパフォーマンス向上が期待できます。
Wi-Fi 7は、Wi-Fi 6Eよりもさらに高速な通信速度と低遅延を提供するために、広帯域幅や改良されたデータ伝送技術を採用しています。また、複数の帯域を同時に使用することで、ネットワーク負荷が分散されるため、産業IoT、VR、ARなどへの活用も見込めます。
クラウド管理型無線アクセスポイント
クラウド管理型無線アクセスポイントは、複数の拠点を持つ企業が無線ネットワークをクラウド上で一元的に管理するためのツールとして注目されています。IT担当者が現地にいなくても、遠隔からリアルタイムでアクセスポイントの状態を監視・管理することが可能です。
設定の変更やトラブル対応が容易となり、管理負担を減らせることから、近年はクラウドベースの管理ツールを導入する企業が増えています。
無線アクセスポイントの導入メリット
次に、無線アクセスポイントの導入によって、企業がどのようなメリットを得られるのかを解説します。
業務効率の向上
無線アクセスポイントの導入によって、ケーブルなしでネットワーク接続ができるようになります。従業員は会議室やリモートワークスペースなど、オフィスに無線アクセスポイントが設置されているエリアであればどこからでも柔軟に作業が可能です。作業場所に依存せず、情報共有やリアルタイムのコミュニケーションが促進されるので、業務スピードが向上します。
柔軟なネットワーク環境の構築
従来の有線ネットワークでは、オフィスのレイアウト変更やデバイスの増設時に、ケーブル配線の変更が必要でした。しかし、無線アクセスポイントによって無線接続が可能になれば、こうした手間は不要となります。
また、ゲストネットワーク機能を活用して、訪問者や外部業者にインターネット接続を提供しながら、社内ネットワークとの分離も可能です。外部のデバイスが接続されることによるセキュリティリスクを最小限に抑えつつ、柔軟なネットワーク環境を構築できます。
コスト削減
従来の有線ネットワークでは、新たにケーブルを敷設するためのコストや、オフィスレイアウト変更時の再配線コストが大きな負担となります。無線アクセスポイントを導入すれば、物理的な配線が不要となり、配線工事やメンテナンスにかかるコストと手間を削減可能です。
また、クラウド管理型の無線アクセスポイントを導入することで、遠隔からの監視や設定変更が可能です。IT管理者の負担が軽減されるほか、運用コストも抑えられます。
スケーラビリティの確保
企業の成長に伴い同一建物内に拠点を増設する場合や、ネットワークに接続するデバイスの数が増える場合でも、無線アクセスポイントを追加することでネットワークを簡単に拡張できます。
また、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7などの次世代規格をサポートする無線アクセスポイントを導入すれば、大量のデバイスが同時に接続される環境でも通信が安定します。将来的なビジネス拡大やネットワーク利用の増加にも柔軟に対応でき、効率的な運用が可能です。
無線アクセスポイントの設置場所を選定する際のポイント
無線アクセスポイントを効果的に設置するためには、カバー範囲や電波干渉、設置環境、接続環境など、さまざまな要素を考慮する必要があります。本章では、企業が最適な設置場所を選定する際に考慮すべきポイントについて解説します。
カバー範囲
無線アクセスポイントの電波が届く範囲を確認し、必要なエリア全体を効率的にカバーできるように配置することが重要です。広いオフィスや工場では、複数のアクセスポイントを適切に配置し、それぞれの範囲が重ならないようにすることで、効率的かつ安定した通信を確保できます。
また、 無線アクセスポイントはできるだけ高い場所に設置することがおすすめです。社内の備品や人によって電波が遮られず、より遠くまで届きやすくなります。
電波干渉の有無
電波干渉が発生すると、通信速度が低下したり、接続が不安定になったりするおそれがあります。特に、ほかのWi-Fi機器や電子機器が多い場所では、同じ周波数帯の電波が干渉し合うことがよくあるため注意が必要です。
電波干渉を最小限に抑えるためには、無線アクセスポイントの周波数帯を調整し、異なるチャンネルを使用しましょう。
設置環境
設置環境によっては、温度変化、湿度、粉塵などの影響を受けることがあります。特に、温度変化の激しい製造工場や、外気の影響を受けやすい倉庫・物流センターなどでは、アクセスポイントの性能や寿命に悪影響を及ぼしかねません。
まず、機器を直射日光の当たらない場所や湿気の少ない場所に設置することで、温度や湿度によるダメージを軽減できます。また、温度が高い環境であれば、冷却システムの導入や換気を行い、無線アクセスポイントの温度を適切に管理することが重要です。
さらに、外部に設置する場合や、過酷な環境が予想される場合には、屋外用の無線アクセスポイントを選ぶことがおすすめです。防水、防塵、耐温度仕様が備わっており、厳しい環境でも安定した運用を実現できます。
接続環境
無線アクセスポイントを設置する場所において 、有線LANや電源の接続が可能かどうかも事前に確認しましょう。もしLANケーブルが引けない場所に無線アクセスポイントを設置したい場合は、メッシュWi-Fiを活用するのも一つの選択肢です。
メッシュWi-Fiとは、メッシュ(網目)のようにネットワーク機器同士がつながる通信形態です。複数の無線アクセスポイントが連携してネットワークを構成することで広範囲をカバーでき、配線が難しい環境でも安定した接続環境を構築できます。
最大接続台数
接続するデバイスの数も重要な考慮ポイントです。従業員数やデバイス数が多い場所では、同時に多数のデバイスが接続されるため、複数のアクセスポイントを配置して負荷を分散させる必要があります。
また、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7対応の無線アクセスポイントを選ぶと、より少ない台数で多くのデバイスを同時に接続できます。
ゲストネットワーク、利用別のVLAN(仮想LAN)の必要性
従業員用のネットワークとゲスト用ネットワークを分離する必要がある場合、ゲストネットワークや利用別のVLAN(仮想LAN)を設定します。VLANとは、物理的なネットワーク構成に関係なく、同じネットワーク上で仮想的に分けられたグループを作成する技術です。
無線アクセスポイントは、ゲストネットワークやVLANとは分離させて設置しましょう。
無線アクセスポイントの設置台数
大規模なエリアに多くのアクセスポイントを配置する場合は、適切なローミング機能も考慮する必要があります。無線LANのローミング機能により、ユーザーがアクセスポイント間を移動しても接続が途切れないように設置台数を検討し、 設計することが重要です。ローミングがスムーズでないと、通信が一時的に途切れるおそれがあり、使い勝手や業務効率に影響を与えます。
セキュリティ
無線アクセスポイントは、鍵付きの部屋や高い天井など、物理的に直接操作が不可能な場所に設置しましょう。 誰にでも手が届くような無防備な場所に設置することで、不正アクセスや情報漏洩のリスクが高まります。物理的なアクセス制御も考慮し、セキュリティの高い場所に設置することが重要です。
将来の拡張性
企業の成長に伴い、ネットワークの拡張が必要となる可能性があります。そのため、ネットワークインフラの構築時には、ケーブル配線に余裕を持たせ、新たなアクセスポイントを容易に追加できるようにしておくことが重要です。
将来的に追加の機器が必要となった際に、物理的な設置作業や配線工事を最小限に抑えられるよう、あらかじめエリア全体のカバレッジ計画も立てておくとよいでしょう。
また、選定時には、最新のWi-Fi規格をサポートしている無線アクセスポイントを選ぶことがおすすめです。デバイス増加や技術進化に柔軟に対応できるネットワーク環境を構築できます。
無線アクセスポイント導入・運用時の注意点

無線アクセスポイントを導入・運用する際には、セキュリティやコスト面に注意する必要があります。本章では、導入・運用時に検討すべき重要なポイントについて解説します。
セキュリティ対策の検討
無線アクセスポイントを導入する際に、最も重要視したいのがセキュリティ対策です。無線ネットワークは、電波が届く範囲内であれば誰でもアクセスを試みることができるため、有線ネットワークに比べてセキュリティリスクが高い傾向があります。具体的には、外部からの不正アクセスやデータ盗聴のリスクが懸念されます。
このようなリスクを回避するためには、以下の対策が必要です。
- 通信データの暗号化:データが第三者に盗まれないよう、通信内容を暗号化します。最新の暗号化プロトコルのWPA3を使用し、強固な通信セキュリティを確保します。
- アクセス制御の実施:ネットワークに接続できるデバイスを制限し、認証が必要なシステムを導入することで、アクセスを制御します。
運用体制の検討や運用自動化
無線アクセスポイントの運用には、効率的な管理体制が必要です。特に、多くの無線アクセスポイントを運用する大規模な環境では、手動での管理は負担が大きくなります。多くの無線アクセスポイントを設置する場合、集中コントロール型やクラウドベースの管理システムを導入し、各アクセスポイントの設定や監視を効率的に行うのがおすすめです。
集中コントロール型の無線アクセスポイントでは、複数のポイントを一元的に管理できます。ネットワークの状態をリアルタイムで監視し、設定変更や障害対応を迅速に行うことが可能です。初期費用は高くなるものの、長期的に見ると管理業務の負担が軽減され、人件費や運用コストを抑えられます。
デバイスとの親和性の確認
無線アクセスポイントと接続するデバイス(PCやスマートフォン)との相性を事前に確認することも重要です。最近は減ってきているものの、無線規格やセキュリティプロトコルがデバイスごとに異なる場合、接続トラブルが発生するおそれがあります。導入前にテストを行い、デバイスとの親和性を確認することでトラブルを防げます。
クライアント種別ごとのセキュリティ対策
近年、IoTデバイスなどが普及するなかで、ネットワークに接続するクライアントデバイス自体のセキュリティレベルが低いケースもあります。これらのデバイスがネットワークに接続すると、ほかのデバイスやネットワーク全体に悪影響を与えるリスクがあるため注意が必要です。クライアントデバイスの種類別にネットワークを分離するなど、設計段階から対策を検討しましょう。
運用コストとメンテナンス費用の考慮
無線アクセスポイントの導入コストだけではなく、運用コストやメンテナンスコストも重要な要素です。企業の規模やネットワークの要件に応じて、次の導入形態から最も適したものを選ぶことで、初期費用や運用コストを最適化できます。
特徴 |
メリット |
デメリット |
|
スタンドアローン型 |
各アクセスポイントが独立して動作し、個別に管理される |
初期コストが低く、設定も簡単 |
台数が増えると管理が煩雑になる |
クラウド型 |
クラウドを介して複数のアクセスポイントを一元的に管理する |
遠隔からリアルタイムで複数のアクセスポイントを一元管理できる |
毎月クラウドサービスの利用料が発生する |
メッシュ型 |
複数のアクセスポイントが相互に通信し、広範囲をカバーする |
配線が難しい場所に設置できる |
初期費用が高い |
集中コントロール型 |
コントローラーを使用して複数のアクセスポイントを一元的に管理する |
管理効率が高く、セキュリティや設定の統一が容易 |
コントローラーの導入に費用がかかる |
無線アクセスポイントの導入事例

最後に、無線アクセスポイントの導入により通信が安定し、生産性アップに成功した企業の事例を紹介します。
導入背景と課題
株式会社日立産機システム 中条事業所様は、広大な敷地に4つの建屋が並ぶ最新鋭の工場で、産業機器の製造を手がけています。同社では運用から10年以上経過し、老朽化した無線LAN設備が課題となっていました。
無線アクセスポイントを的確に配置する必要があるものの、当時とはモバイル端末の台数や使用エリアが変わっており、対応しきれていない状態でした。これによりネットワーク遅延や切断を引き起こし、生産性の低下を招いていたのです。
解決方法
課題を解決するため、ネットワーク機器の選定・構築・無線アクセスポイントの設置・テストまでをワンストップで提供するグローバルネットコアのサービスを選択しました。グローバルネットコアは現地調査を行い、現状の電波状況や工場内の障害物になりうるもの、配線経路までを把握したうえでアクセスポイントの追加箇所を設計。設置工事は現場と密にコミュニケーションを取り、製造の進行を止めないように進められました。
導入後の成果
適切な無線アクセスポイントの設置による新しい無線LAN環境では、工場のどこでも遅延や切断がなく、しっかりとネットワークがつながるようになりました。通信が原因の作業遅延がなくなり、製造現場の生産性が向上しています。社内IT部門も本来の業務に集中できるようになりました。
今後のIoT化や情報セキュリティ対応に向けた基盤も整備され、将来にわたる拡張性の高いネットワーク環境の構築に成功しました。
まとめ~自社に合った無線アクセスポイントを導入しよう~
無線アクセスポイントの導入は、ネットワーク通信を最適化して企業の業務効率を向上させるために有効です。ただし、無線アクセスポイントを効果的に活用するには、設置場所の選定や機器の選び方はもちろんのこと、自社に合った導入形態を選び、適切に運用することが必要です。
<無線アクセスポイントの導入・改善を検討されている方へ>
無線アクセスポイントを新たに導入する際・今お使いの無線アクセスポイントの改善を検討される際は、グローバルネットコアがネットワーク設計から無線アクセスポイントの設置、最終テストまでワンストップでお手伝いいたします。お悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。