クラウド化とは?業務の活用例や導入するメリット・デメリットを紹介
2024.08.28(水)
- クラウド
近年、クラウドが注目を集めており、導入する企業が増加しています。
既存システム・ソフトウェアをクラウド化すると、運用管理がしやすくなる、場所を問わずサービスを利用できるなどの効果が期待できます。
これからクラウド化を導入するなら、対応できる業務の把握が重要です。
本記事では、クラウド化できる業務やメリットなどを解説します。
クラウド化とは
そもそもクラウドとは、ネットワーク経由でITインフラやソフトウェアなどのサービスを提供する形態のことです。従来は、ITインフラを利用するには機器を購入し、ソフトウェアを使うにはパソコンにインストールする必要がありました。
しかし、クラウドの普及によって、自社でITインフラを購入せず必要な分のリソースが使えるようになりました。さらに、ソフトウェアもパソコンにインストールせずにオンライン上で利用が可能です。
クラウド化とは、既存のシステムやソフトウェアなどをクラウドサービスに置き換えることを指します。
例えば、以下の活用例が挙げられます。
- サーバーやストレージをAWSのサービスに切り替える
- メールをGoogleが提供するGmailに移行する
- クラウドストレージにデータを保管してペーパーレスを実現する
クラウド化を行うことで、インターネットに接続できる環境があると各種クラウドサービスが利用できるようになり、場所を問わず業務可能な状況を作れます。
クラウド化の種類
クラウド化には以下の3種類のサービス形態があります。各サービス形態の特徴を把握すれば、自社に最適なサービスを検討しやすくなります。
- SaaS
- PaaS
- IaaS
順番に見ていきましょう。
SaaS
SaaSは「Software as a Service」の略語で、ソフトウェアのクラウド化を指します。ネットワーク経由でソフトウェアが動作するプラットフォームが提供されます。
SaaSの契約をすると、パソコンにソフトウェアをインストールせず、ブラウザからすぐに利用を開始できます。
SaaSの身近な例は以下のとおりです。
- Webメール:Gmail
- ビジネスチャットツール:Slack、Chatwork
- オンラインストレージ:Dropbox
- ワープロソフト:Googleドキュメント
PaaS
PaaSは「Platform as a Service」の略語で、プラットフォームのクラウド化を指します。主にハードウェア・ネットワーク・OSなどのシステム開発・アプリケーション開発などを実施するための環境が提供されます。
利用者は自社で開発環境を用意する手間を削減でき、契約後すぐソフトウェア開発に取りかかることが可能です。
PaaSの例は以下のとおりです。
- Amazon Web Services(AWS):AWS Lambda、Amazon RDSなど
- Microsoft Azure:Azure App Service、Azure Cloud Servicesなど
IaaS
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略語で、ITインフラのクラウド化を指します。サーバー・ネットワーク・ストレージなど社内インフラを支える基盤が提供されます。
以前まで物理で運用していたサーバーをオンライン上に構築して運用が可能です。インフラ基盤はすべてネットワーク経由で提供されるため、利用者が必要なリソースを必要な分だけ選択して利用できます。
IaaSの例は以下のとおりです。
- Amazon Web Services:Amazon EC2
- Microsoft Azure:Azure Virtual Machines
企業でクラウド化が進んでいる業務
クラウド化を進めるなら、企業がどのような業務をクラウドに置き換えられるのか把握することが重要です。他社の例を参考にすると、自社での活用イメージをつかみやすくなります。
総務省が公開している令和3年版の情報通信白書によると、企業のクラウドサービスの利用状況は2020年で68.7%でした。クラウドサービス導入の効果は、87.1%の企業が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答しています。
クラウドサービスの利用内訳は、割合が高い順に以下のとおりです。
- ファイル管理・データ共有
- 電子メール
- 社内情報共有・ポータル
- スケジュール共有
- 給与、財務会計、人事
- データバックアップ
- 営業支援
- eラーニング
- 取引先との情報共有
- プロジェクト管理
- 受注販売
- システム開発・Webサイト構築
- 生産管理・物流管理・店舗管理
- 購買
- 認証システム
- 課金・決済システム
- 研究・開発関係
後述しますが、企業のあらゆる業務がクラウド化できます。自社の対象となる業務を洗い出すと、スムーズにクラウド化を進められます。
クラウド化できる主な業務
続いて、クラウド化できる具体的な業務を見ていきましょう。
- 営業
- マーケティング
- 人事労務・経理・法務
- 情報システム
参考にしてみてください。
営業
営業活動でクラウド化できる業務は多岐にわたります。
主な業務は以下のとおりです。
- 営業管理・顧客管理
- コミュニケーション
- データ共有
営業管理・顧客管理は、BI(ビジネスインテリジェンス)、SFA(営業管理システム)、CRM(顧客管理システム)が挙げられます。各システムをクラウド化すると、営業担当者が場所を問わずインターネット経由で情報にアクセス可能です。複数人でのリアルタイムの情報共有ができるため、特定の営業担当者に依存せず業務を実施できます。
また、営業活動では社内外の関係者とコミュニケーションを取る機会が多いと想定されます。ビジネスチャットツールやWeb会議ツールの導入によって、場所を問わず円滑なコミュニケーションが取れます。
クラウドサービスを活用すると、見積書や契約書などをクラウド上で保管・編集が可能です。出社しなくても押印・署名などの手続きが行えるため、紙で書類を管理・運用する手間を削減できます。
マーケティング
マーケティング業務でもクラウド化の実現が可能です。例えばマーケティング活動を自動化できるMAツールがクラウドに置き換えられます。
クラウド化すれば自社サーバーを用意しないため導入がスムーズになります。さらに、ベンダー側がシステムのアップデートに対応するため、自社でMAツールを運用する手間を削減。常に最新バージョンのツールを利用でき、セキュリティ対策につながります。
また、新規顧客を獲得する一連の施策の管理をクラウド上で行えます。複数人でスムーズに情報連携ができるため、円滑に業務を進められるでしょう。
人事労務・経理・法務
バックオフィス業務でクラウド化を活用する企業も増えています。例えば、勤怠管理システム・人事管理システム・採用管理システム・会計ソフトなどをクラウド化します。情報をクラウドで一括管理できるようになるため、情報の管理・集計にかかる時間の短縮につながります。
また、人事部門に関連しますが、オンライン学習にもクラウド化が役立ちます。オンライン学習の教材をクラウドサービスで共有すれば、受講者が場所の制約を受けず研修を受けることが可能です。
営業と同様にクラウドサービスの利用で契約書や請求書などの書類データも管理しやすくなります。必要なデータを適切なタイミングで調べられるため、業務の効率化を実現できます。
情報システム
情報システム部門での業務にクラウド化が活用可能です。クラウドサービスのIaaSを活用すると、物理で管理しているインフラ基盤をオンラインで構築できます。インフラ設備の運用をクラウド事業者に任せられるため、情報システム担当者の業務負担の軽減につながります。
また、クラウドサービスの導入によって、データをクラウド上で保管すると従業員が会社に出社しなくても働くことが可能です。テレワーク環境の整備を促進できるため、従業員の満足度を高められます。
クラウド化のメリット
クラウド化のメリットを把握すると、導入する目的を明確にしやすくなります。
- 導入・運用コストを抑えやすい
- 運用管理がしやすくなる
- 場所を問わず利用できる
- 導入までの期間が短い
- BCP対策になる
順番に見ていきましょう。
導入・運用コストを抑えやすい
クラウド化すると、自社でIT基盤を用意する必要がありません。
システム・アプリケーション開発をするには、サーバーやネットワークなどの機器を購入して開発環境の整備が必要です。
クラウドサービスであれば、必要なリソースを選んで開発環境を構築できます。物理機器を購入する費用がかからないため、初期費用や運用保守などのコスト削減につながります。
また、クラウドサービスを従量課金で利用すると、使用した分しか料金が請求されません。無駄なコストを削減できるため、ランニングコストも抑えやすくなります。
運用管理がしやすくなる
クラウドは提供元企業がサービスを運用・管理しています。自社でクラウドサービスを運用する手間を削減できるため、情報システム担当者の負担を軽減可能です。
自社で運用する場合、専門スキルを身につけた人材の確保が必要です。さらに物理機器が故障したら、部品を取り替えなくてはなりません。
クラウド化すれば、常に最新バージョンのITインフラやソフトウェアを利用できます。
場所を問わず利用できる
クラウド化すると、オンライン上でサービスを利用するため、社内はもちろん社外からでもデータにアクセスできます。従業員が自分のいる場所を問わずサービスを利用でき、テレワークの推進が可能です。
また、クラウド化はデータ共有が容易です。遠隔地にいても同じデータの閲覧、編集ができるため、業務の効率化につながります。
導入までの期間が短い
クラウドサービスは、契約したら素早く利用を開始できます。自社で開発環境を準備する必要がないためです。機器の調達やソフトウェアのダウンロードが不要のため、導入までの期間が短くなります。
オンプレミスの場合、機器の調達に数週間〜数ヵ月かかるケースがあります。素早くサービスを利用したいなら、クラウド化が最適です。
BCP対策になる
クラウド化はデータをオンライン上で管理します。企業の拠点で自然災害や火災などが発生しても、大切なデータを保護できます。企業への損害を最小限に抑えられるため、継続して事業に取り組むことが可能です。
クラウド化のデメリット
クラウド化はメリットだけでなく、デメリットもあります。デメリットを把握したうえで、導入を検討しましょう。
- 既存システム連携・カスタマイズがしづらい
- サービスが停止になる可能性がある
- 使い方によってランニングコストが高額になる
- セキュリティリスクがある
参考にしてみてください。
既存システム連携・カスタマイズがしづらい
クラウドは提供元企業が定める範囲内でサービスを利用します。仕様・契約内容にないサービスの使い方はできない可能性があります。
利用者の要件によっては既存システムの連携やサービスのカスタマイズが難しい場合があることに注意しましょう。
既存システム連携やカスタマイズがクラウドで難しいときは、一部オンプレミス環境を取り入れて環境を構築するハイブリッドクラウドも検討してみてください。
サービスが一時的に停止になる可能性がある
クラウドは提供元企業側のトラブルによって、一時的にサービスが使えなくなる可能性があります。自社では対応できない事象のため、解決を待つしかありませんが、環境を冗長化し対策をすることができます。 冗長化を行うことにより、一方の環境に問題が発生しても、もう一方に切り替えてシステムの利用を継続することができます。
業務の停止ができないシステム・アプリケーションなどをクラウド化する場合は、冗長化などの対策を必ず行いましょう。
使い方によってランニングコストが高額になる
クラウド化はコストを抑えられるメリットがありますが、サービスの使い方によってランニングコストが高額になる可能性があります。特に従量課金制の場合、利用量に応じて料金が決まります。利用人数・時間・データ量が多くなると利用量が増えるので料金が高くなりやすい傾向があります。
クラウド化する際は、利用人数や用途などを明確にしておくと、必要以上の利用を防げてコストを削減できます。
また、クラウド化のコストが適正かどうか正しくとらえるには、オンプレミス環境運用時の機器代・電気代のほか、人的コストも含めた比較が必要です。
クラウド化のメリットを踏まえた上で、単純なコストだけで判断しないようにしましょう。
セキュリティリスクに備える必要がある
クラウド化すると、提供元企業のサーバーにデータを保管され、データのやり取りはインターネットを介して行われます。サイバー攻撃や不正アクセスなどの被害を受ける可能性があることに注意が必要です。
ただし、クラウドサービス側もセキュリティ対策には非常に力を入れていて、世界最大級のクラウドサービス「AWS」の例を見ると、100以上のセキュリティ標準とコンプライアンス認証を受けています。
クラウドサービスを選定する際は、クラウドサービス自体のセキュリティ対策を確認し、自社のセキュリティ要件を満たしているか確認しましょう。
また、クラウドサービス側で「責任共有モデル」というものを示している場合があります。これは、クラウドサービス提供側と利用者側の間でセキュリティとコンプライアンスの責任をどう分担するか示したものになるので、しっかり確認し自社の責任範囲を理解しておく必要もあります。
企業がクラウド化する際の流れ
クラウド化のメリット・デメリットを把握したところで、具体的なクラウド化の流れを見ていきましょう。以下の流れを把握すれば、抜け漏れなくスムーズに導入を進められます。
- 目的・対象の業務を明確にする
- クラウドサービスを選ぶ
- 運用体制を整える
- サービスの導入・運用をする
目的・対象の業務を明確にする
クラウド化は、あくまで企業の目的を達成するための一つの手段です。事前に目的を明確にすると、課題の分析ができて効果的な施策を検討できます。さらにクラウド化した後の運用を考慮した戦略の立案につながります。
企業の現状を分析して、具体的な目的を設定しましょう。
また、業務や目的ごとに適したクラウドサービスが異なります。目的を決めたら、クラウド化する対象業務を洗い出してみてください。
すべての業務を洗い出して優先順位をつけると、優先するべき業務・課題を判断できます。
クラウドサービスを選ぶ
続いて、目的や対象業務に最適なクラウドサービスを選びましょう。
一例ですが、以下のように自社の選定基準を決めるとスムーズに検討を進められます。
- 目的を達成できるサービス内容か
- 料金体系は適切か
- サポート内容は充実しているか
- 自社のセキュリティ要件を満たしているか
企業によってクラウドサービスの選定基準は異なるため、自社に最適な軸を見つけてみましょう。
クラウドサービスを選んだら、導入に向けて各クラウドサービスが認定するパートナー企業に相談するのも1つの手です。
認定パートナー企業のサポートを受けることで、よりスムーズに目的に沿ったクラウドの導入・運用を実現することができます。
運用体制を整える
クラウド化は導入して終わりではありません。安定してクラウドサービスを利用できるように運用体制を整備する必要があります。クラウドサービスの導入後、スムーズに運用へ取りかかれます。
また、運用体制に加えて、マニュアルの整備も行いましょう。マニュアルがあると運用担当者の属人化を防げるため、業務内容を共有しやすくなります。
ただし、自社のみでクラウド化したあとの運用をするのが難しいなら専門家に相談しましょう。クラウド化の経験が豊富な担当者の運用を受けられるため、トラブルが発生したら迅速な対処を期待できます。
サービスの導入・運用をする
クラウドサービスを導入して業務をクラウド化しましょう。導入が完了したらユーザーに利用開始のアナウンスをして、運用業務に取り組みます。
運用するなかで、ユーザーから問い合わせがあったら回答します。スムーズに回答できるとユーザーからの信頼を獲得できるため、クラウドサービス利用の促進が可能です。定期的に現場の意見を聞いて改善を行いましょう。
クラウド化の取り組み事例
最後にクラウド化の取り組み事例を紹介します。
AWSクラウドで実現した機器故障のない快適なIT環境
建築コンサルタント業や地域調査業を展開する企業にAWSクラウドサーバーの導入を提案しました。
同社では「緊急事態下でも継続して業務を行えるシステムにしたい」「公共的な仕事を実施するにあたって、データの機密化を徹底したい」などの課題がありました。
「グローバルネットコアはAWS認定の有資格者が多数在籍している」「AWSは大手金融機関が利用しているという安全面がある」などの理由から、使い勝手を変えずに安全なクラウド環境を導入するためにAWSの導入を決意しています。
AWS導入後は、物理サーバーがなくなったことでメンテナンスが不要になりました。さらに、同社は法令点検のため計画的に停電を実施していますが、以前まで手動で対応していた物理サーバーを起動する手間を削減できています。
AWSクラウドでキャンペーンサイトの安定した運用を実現
販売促進プロモーションを提供する企業に、キャンペーンサイト用のAWSクラウド環境の構築・運用を提案しました。
同社は全国の小売店やメーカーに向けて、Webキャンペーン応募システムを提供しています。クライアントには全国をターゲットとする大手企業も多く、SNSなどで告知を行うとキャンペーンサイトへのアクセスが集中してサーバーに高い負荷がかかることもありました。 そのような状況下でもコストを抑えつつ、安定稼働できるサーバー環境が求められていました。
同社がAWSクラウドを導入する決め手になったのは、使った分だけ費用が発生する従量課金制であることと、トラフィックに応じてリソースを柔軟に調整できる点でした。
また、グローバルネットコアの運用担当者がAWS認定資格の中でも最高レベルの資格保有者であることも導入ポイントのひとつです。
AWSの導入により、同社内でのサーバー運用における不安と課題が解消され、Webキャンペーン応募システムを利用するクライアントにもシステムの安定性をアピールできるようになりました。
まとめ~あらゆる業務をクラウド化しよう~
クラウド化は、既存システムをクラウドサービスに置き換えることを指します。企業ではクラウドの需要が高まっており、あらゆる業務でクラウド化を実現しています。
これからクラウド化を実施するなら、どのような業務に対応できるのか把握することが重要です。本記事を参考にクラウド化できる業務を理解し、導入に取り組んでみてください。
なお、グローバルネットコアでは、新潟県で初となるAWSサービスパートナー認定企業に選ばれました。AWSの設計構築から運用まで一貫対応しており、クラウド化の支援を行っています。
クラウド化を検討している方は、お気軽にご相談ください。
クラウドの活用を検討している企業のみなさまへ
さまざまなメリットを持つクラウドですが、導入のタイミングや進め方にお悩みを抱えていませんか?また、自社のシステム運用に最適な環境をお探しではありませんか?
20年以上サーバーの運用に携わり、かつ、データセンターも保有し、さらに、クラウドサービスプラットホーム最大手のAWSの認定資格を有する技術者が30名以上在籍する当社が、御社に最適なITシステム環境をご提案します。