【AWSとは何かを知りたい企業向け完全ガイド】基本から構築のポイントまで紹介
2025.12.12(金)
- クラウド
企業のITインフラに大きな変革をもたらしているクラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」は、コスト削減・スピード改善・柔軟な拡張性といった多くのメリットから、企業規模を問わず注目されています。
国内でもクラウド導入率は年々増加傾向にあり、特にAWSを活用したサーバー構築や業務効率化に関心を寄せる企業が増えています。
この記事では、「AWSとは何か」についての基本的な理解から、企業がAWSを使ってサーバー構築を行う際のポイントまで、わかりやすくご紹介していきます。
AWSとは何か
クラウドコンピューティングの基礎知識
従来、企業のIT環境は自社内にサーバーやネットワーク機器を設置・運用する「オンプレミス型」が主流でした。しかし、近年急速に広がっているのが「クラウドコンピューティング」です。
クラウドとは、インターネット経由で必要なときに必要な分だけ、ITリソース(サーバー、ストレージ、データベース、ソフトウェアなど)を利用できるサービスのことを指します。
クラウドの最大の特徴は、初期投資が不要で、利用量に応じた従量課金制を採用していることです。これにより、サーバーの購入や保守といったコスト・人的リソースを大幅に削減できます。また、利用者はWebブラウザやAPIを通じてリソースを簡単に追加・削除できるため、ビジネスの拡張にも柔軟に対応できます。
クラウドサービスには「IaaS(インフラ)」「PaaS(プラットフォーム)」「SaaS(アプリケーション)」という分類があり、AWSはこの中でもIaaSの代表格として広く利用されています。
AWSのサービス構成と特徴
「AWS(Amazon Web Services)」は、Amazonが提供する世界最大規模のクラウドコンピューティングサービス群です。
2006年に商用化されて以来、世界190か国以上、数百万以上の顧客に利用されており、その中にはスタートアップから大企業、政府機関まで幅広い業種が含まれます。
AWSのサービスはたくさんありますが、大きく以下のようなカテゴリに分類されます。
コンピューティングサービス(例:Amazon EC2)
仮想サーバーを作成してアプリケーションを稼働させるサービスです。サーバースペックを自由に選べ、オンデマンドで起動・停止できます。
ストレージサービス(例:Amazon S3)
高耐久性・高可用性のオブジェクトストレージを提供。バックアップやログ保存、Webコンテンツの配信にも適しています。
大量の非構造化データ(動画、画像、ログなど)を効率的に保存・管理するのに向いている。
データベースサービス(例:Amazon RDS, DynamoDB)
フルマネージドなリレーショナル/非リレーショナルデータベースサービス。バックアップやスケーリングも自動化されており、開発の生産性が向上します。
※非リレーショナルデータベース…従来のテーブルと行による構造を持たず、データの種類に合わせた柔軟なストレージモデルを持つデータベースのこと。
ネットワーキング(例:VPC、Route 53)
セキュアな仮想ネットワーク環境を構築可能。専用のDNSサービスやVPN連携など、企業の複雑なネットワーク要件にも対応しています。
AWSの特徴の一つとして、「必要な機能を必要な分だけ組み合わせられる柔軟性」が挙げられます。企業の要件やフェーズに応じて、段階的に導入・スケールアップできる点が評価されています。
さらに、国内データセンターの存在(東京リージョン・大阪リージョン)や、日本語対応のサポート体制が整っている点も、日本企業にとっては安心材料です。
AWSは単なるクラウドサービスではなく、ITインフラの設計・構築・運用のあり方を根本的に変えるプラットフォームとして、企業のデジタルシフト・クラウドシフトを支える存在となっています。
AWSを企業が導入するメリットとは
コスト削減・柔軟なスケーラビリティ
AWSが企業に選ばれる大きな理由の一つが「コストの最適化」です。
従来のオンプレミス型システムでは、サーバーやネットワーク機器の購入・設置・保守に多大な初期投資が必要でした。また、アクセスの増加に備えて余裕を持ったキャパシティを用意する必要があり、結果として無駄なコストが発生しやすい構造でした。
一方、AWSでは利用した分だけ料金を支払う従量課金モデルが採用されており、不要なリソースを抱えるリスクがありません。
さらに、負荷の増減に応じて自動的にリソースを増減させる「スケーラビリティ」が柔軟に機能するため、急なアクセス増加にも即座に対応できます。
たとえば、繁忙期だけサーバー性能を強化し、通常期は最低限の構成に戻すという運用も可能です。これにより、コストと性能のバランスを最適化でき、企業のIT投資効率を大幅に改善できます。
また、AWSはインフラのみならず、機械学習や分析などの多数のサービスをもっており、多くの顧客・知見を保有しています。
結果として、AWSは障害・問題解決に強く、利用規模が大きい顧客にも選ばれやすい理由となっています。
特に中小企業にとって、初期投資を抑えつつ、段階的にインフラを強化できる点は大きな魅力です。
AWSはこうした柔軟性を求める企業にとって、非常に実用的なクラウド基盤といえます。
セキュリティと信頼性の高さ
「クラウドはセキュリティが不安」という声は過去にはよく聞かれましたが、現在のAWSはむしろオンプレミス以上に強固なセキュリティ対策を提供しています。 AWSは国際的なセキュリティ規格・監査基準(ISO 27001、SOC 1/2/3、PCI DSSなど)に準拠しており、多層的なセキュリティ体制が敷かれています。
具体的には、以下のような高度なセキュリティ対策が可能です。
- IAM(Identity and Access Management) による細かなアクセス権の設定
- DDoS対策サービス(AWS Shield) による不正アクセスの防御
- 暗号化ストレージ・通信 による情報漏洩リスクの軽減
- CloudTrailやConfig などによるログ監査とトレーサビリティの確保
また、物理的なインフラ面でも、AWSは複数のデータセンター(リージョン・アベイラビリティゾーン)を分散設計しており、災害や障害が発生しても別のリージョンに切り替えることで業務継続性を高く保てる構造になっています。たとえば、日本国内では「東京リージョン」と「大阪リージョン」が利用でき、国内企業の法令やガイドラインにも対応可能です。
このように、AWSは技術的にも運用的にも、高いセキュリティと信頼性を担保しながらクラウド環境を提供しており、情報資産を扱う企業でも安心して導入できるプラットフォームとなっています。
※アベイラビリティゾーン…同一リージョン内にある、物理的に独立したデータセンターの集まりのこと。
AWSを使ったサーバー構築の基本ステップ
AWSは、従来のような物理サーバーの調達・設置といった手間を省き、数分で仮想サーバーを立ち上げられる柔軟な環境を提供しています。ここでは、企業がAWSを利用してサーバーを構築する際に押さえておくべき基本ステップを解説します。
詳しく知りたい方はこちらをチェックしてください。
インスタンス選定とVPC設計の基本
サーバー構築の第一歩は、Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)を使ったインスタンスの選定です。
インスタンスとは、仮想マシンのことで、CPUやメモリ、ストレージ構成の異なる複数のタイプが用意されています。
次に重要なのが、ネットワークの構成です。AWSでは仮想的な専用ネットワークを設計する「VPC(Virtual Private Cloud)」という機能を利用して、ネットワークの構成を柔軟に制御できます。 この段階で、IPアドレスの範囲や通信経路の設計を誤ると、後の運用に大きな支障が出るため注意が必要です。
ネットワーク構成に自信がない場合は、インフラ設計に詳しいパートナー企業の支援を検討すると良いでしょう。
セキュリティグループ・IAM設定の注意点
AWS上に構築したサーバーを安全に運用するには、アクセス制御の設計も不可欠です。
その中心的な役割を担うのが、セキュリティグループとIAM(Identity and Access Management)です。
セキュリティグループの設定
セキュリティグループは、仮想ファイアウォールのようなもので、インスタンスへの着信・発信トラフィックの制御を行います。
多くのセキュリティインシデントは、設定ミスや意図しないポートの開放が原因です。
構築後に必ずアクセス制限の確認を行い、テスト環境と本番環境を明確に分けることが推奨されます。
IAMの基本設定
IAMは、AWSのリソースへのアクセスを管理するための認証・認可機能です。
IAMを適切に設計しないと、社内外からの不正アクセスや情報漏洩リスクが高まります。
初期構築段階で専門家のレビューを受ける、もしくはセキュリティベストプラクティスに沿ったテンプレートを活用するのが安全です。
企業がAWS導入を検討する際の注意点
AWSは非常に柔軟で高機能なクラウドプラットフォームですが、その分、導入と運用にあたっては注意すべきポイントも多く存在します。
とくにIT部門のリソースが限られている中小企業では、導入後の運用負荷やコストの見積もり不足が課題となることも少なくありません。
ここでは、企業がAWS導入を検討するうえで事前に確認しておきたい2つの視点をご紹介します。
内製か外注か?体制づくりと運用設計
AWSはサービスの自由度が高いため、「導入して終わり」ではなく、構築後の運用体制や技術支援の設計が不可欠です。
企業がAWS導入を成功させるには、以下のような運用体制の方針を明確にすることが求められます。
内製で対応する場合のポイント
内製化のメリットは、ノウハウの蓄積や柔軟な変更対応が可能になる点です。
一方で、社内に以下のようなスキル・リソースが求められます。
- AWSの基本操作や設計に関する知識
- セキュリティや障害対応に関する実務経験
- 運用の継続的改善に向けたPDCA体制の構築
とくに社内のIT人材が少ない企業では、初期構築までは外注し、その後徐々に内製化を進める「ハイブリッド運用」が現実的です。
外部パートナーに依頼する場合
外注する場合は、AWSの構築・運用に特化した専門企業を活用することで、短期間で高品質な環境を整備することが可能です。
以下のような点を基準にパートナーを選定するとよいでしょう。
- AWS認定パートナーかどうか
- 企業規模・業種に合わせた支援実績があるか
- 運用フェーズまでカバーできるか(監視・障害対応・コスト最適化など)
私たちグローバルネットコアでは、プロがAWS環境の構築を支援するAWS構築支援サービスや、運用も一括で依頼できるAWSマネージドサービスもご用意しています。
ご不安な点がありましたらまずはご相談ください。解決のため支援させていただきます。
導入前に検討すべきコストとサポート体制
AWSは「従量課金制」であるがゆえに、使用状況次第でコストが大きく変動するという特徴があります。
そのため、導入前には次のような視点から、事前にコストとサポート体制を設計しておくことが重要です。
コストの見積もり・管理
AWSでは、以下のような要因で料金が発生します。
- インスタンスの利用時間・スペック(EC2、RDSなど)
- データ転送量(特にインターネット向けの送信)
- ストレージの使用量(S3、EBSなど)
こうしたコストは、使い方を誤ると予想以上に膨らむリスクがあります。
これを防ぐためには、以下のような管理方法が有効です。
- AWS料金計算ツール(Pricing Calculator)の活用
- コストアラートの設定による予算超過防止
- 月次レポートやダッシュボードによる可視化と分析
サポート体制の検討
AWSは、公式のサポートプランを用意しており、ビジネス向けには「Business Support」「Enterprise Support」などが選べます。
これらには以下のようなサポートが含まれます。
- 24時間365日の技術サポート
- アーキテクチャの相談対応
- 運用ベストプラクティスの提示
ただし、こうしたサポートは別途月額料金が発生するため、事前にコストとのバランスを見極めることが必要です。
また、外部パートナー経由で導入する場合は、パートナー自身が独自の運用保守メニューを提供していることも多く、そちらを活用することでより実践的な支援が受けられるケースもあります。
まとめ~AWSの導入・構築は慎重に検討しよう~
AWS(Amazon Web Services)は、企業のITインフラに革新をもたらすクラウドサービスとして、規模や業種を問わず幅広い企業に選ばれています。
特に、初期投資を抑えつつ柔軟にスケールできる点や、堅牢なセキュリティと高可用性が大きな魅力です。
この記事では、AWSの基本的な概念から、企業にとっての導入メリット、実際のサーバー構築手順、さらには導入時の注意点までを体系的に解説しました。
AWSは便利で自由度が高い反面、設計や運用を誤るとコストやセキュリティのリスクも伴います。そのため、自社の体制やリソースに応じて、「内製か外注か」「どのサービスを使うか」を慎重に検討することが重要です。
もし、AWSの導入やインフラ構築を社内だけで進めることに不安がある場合は、信頼できる技術パートナーの支援を受けることを検討しましょう。
たとえば、当社のAWS構築支援サービス・AWSマネージドサービスのように、構築から運用保守まで一貫して対応できる専門業者と連携することで、より安全かつ効率的にクラウド環境を整備できます。
AWSの活用は、企業の競争力を大きく高める可能性を秘めています。今回の記事を参考に、自社に最適なクラウド戦略をぜひ検討してみてください。
<AWSクラウドの活用を検討している企業のみなさまへ>
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